2009年8月22日土曜日

私的サマリー:小児栄養(08月09年)

小児科栄養の超基礎部分のまとめ。小児科での経験はインターンシップの時+PICUのRDとNICUのRDとの雑談のみで、↓は超基礎的な教科書知識です(例外&他に大切な事が沢山あります)。ちなみに↓を見ると一目瞭然ですが、大人の栄養学とは全く異なりますので、小児科向けの専門資格(Certified Specialist in Pediatric Nutrition (CSP))があります。


(Q1)1000gの赤ちゃんに必要なカロリー、たんぱく質、脂質、水分量は?
(Q2)3歳で14キロ(標準的)の子供に必要なカロリー、たんぱく質、脂質、水分量は?
自問自答してみましたが、やっぱ普段やってないから駄目ですね…。

【低出生体重児の栄養】
・2.5キロ以下では、10-20g/kg/day、2.5キロ以上では20ー30g/kg/dayの体重増加を目指す。身長と頭囲は0.7-1cm/week。
・必要カロリー約120kcal/kg/day (105-130kcalの範囲)。症例によっては150kcal/kg/dayくらい必要なことも。
・PNの場合は、消化にエネルギーを必要としないので、90-120kcal/kg/dayを目安。小児科RDにPNの場合は必要エネルギーを10%減らす人がいたな…。大人の時はこの点考慮していないよう。でも個人的には気にしてます。
・ENの場合、たんぱく質の目安量は:2.5-4g/kg/day
・PNの場合、たんぱく質の目安量は:3-4g/kg/day
・炭水化物は40-50%が目安。グルコース量(mg/kg/min)の許容範囲は体重による。
・脂質の目安は5-7g/kg/day。脂質は総カロリーの40-55%程度。
・出生後、最初の1-2週間で体重が5-15%減少する(Diuresis)。
・水分の目安量(ENの場合):120ー200ml/kg/day。体重などによる。低体重のほうがkg当たりの目安量多目。
・水分の目安量(PNの場合):100ー150ml/kg/day。体重などによる。低体重のほうがkg当たりの目安量多目。
・Taurine for neonates
1000gのベビーの場合は、1日に10~20gの体重増加、必要カロリーは約120kcal、たんぱく質は3-4g(12-16kcal)、脂質は5-7g(45-63kcal)、炭水化物は12-15g(48-60kcal)、水分量は150-200mlって感じかな…。

【小児の栄養】
年齢によって必要栄養量が全く異なるし、活動量にも大きな差。そして、様々な内科、外科、火傷等の疾患の考慮も要…。ここでは、ASPENの臨床ガイドライン「Nutrition Support of the Critically Ill Child」のサマリー(Volume33, Number3 May-June 2009)。重症患者の場合です。
・栄養の過剰投与は肝機能を悪化させたり、高血糖症による感染のリスクがあがる。人工呼吸器(ベンチレーター)の利用な長引くことも。
・Hypocaloric feeding(意図的に必要栄養量を投与しないこと)の場合のデータは無い(大人では有効)。
・たんぱく質の目安量:0-2歳では2-3g/kg/day、2-13歳は1.5-2g/kg/day、13-18歳は1.5g/kg/day。重症火傷などでは、必要量が増えるが4g/kg/day以上では、azotemia、metabolic acidosisなどの問題も。
・脂質の目安量:IVFEの場合は1g/kg/dayからはじめて、中性脂肪をモニターしながら2-4g/kg/dayにあげていく(大人と比較すると凄い量…)。脂質は総カロリーの30-40%に抑える(ASPENによると、これが日常的な処方であるが、抑えるエビデンスは無いとのこと)。他の教科書では25-55%と書かれてました。
・エネルギー量の目安:IC(Indirect Calorimetry)による測定が望ましいが、できない場合は、エネルギーを求める計算式を使う。計算式を使ったものは、誤差も大きいので、注意深いモニタリングとアセスメントが必要。
・炭水化物はPNの場合は40-60%、それ以外はRDAの45-65%(ASPEN Nutrition Support Practice Manualより)。
・水分の目安:1-10 kg (100 ml/kg)、11-20 kg(1000 ml + 50 ml/kg for each above 10 kg)、Above 20 kg(1500 ml + 20 ml/kg for each kg above 20 kg)←授業より
・3歳で14キロの場合は…、たんぱく質は21-28g(84-112kcal)、脂質は28g-56g(252-594kcal)、カロリーは75-90kcal/kgを使うと1050-1260kcal(←は2004年のASPENによるPNにおけるガイドラインsafe practices for parenteral nutritionより)。

2009年8月18日火曜日

私的サマリー:酸と塩(09年8月)


2009年08月18日 | 臨床栄養:静脈栄養での電解質
以前の日記と一部ダブってますが、静脈栄養における塩と酸の私的サマリー。基本的には、塩と酸のバランスはAcetate(acid)とChloride(base)で行われる。他の電解質と異なって、AcetateとChlorideには推奨量はないので状況に応じて調整する。静脈からのナトリウム投与は、Nacl(ナトリウムとChloride)が使われることが多いように思われるが、NaAc(ナトリウムとAcetate)というオプションもある。Bicarbonate(HCO3-重炭酸)は不安定なのでPNに加えることはできない。よって重炭酸の代わりに乳酸や酢酸が使われてきている(注:味の素のビカーボンはそうでないよう)。アメリカの場合、Ringer's Lactate(略RL)は、Na 130mEq/L, K 4mEq/L, Cl 209mEq/L, 重炭酸(HCO3)を酢酸(lactate)として28mEq/L含む。酢酸塩 (acetate)を加えると、acetateは肝臓でbicarbonateにコンバートする。←←これだから分りにくいよね~、体液や静脈投与液なんかをみてると、Cl-とHCO3-なのに、酸と塩の話になるとCl-とacetateとかになってるし…。

血清HCO3-が低い:Metabolic acidosisかRespiratory alkalosis
血清HCO3-が高い:Metabolic alkalosisかRespiratory acidosis
pHが低い=水素イオン数が多い=酸性が強い
pHが高い=水素イオン数が少ない=アルカリ性が強い

【代謝性アシドーシス】血清HCO3-が24mEq/L以下でpHが7.4以下
・下痢(HCO3-の損失)
・Bilary and Pancreatic drainage(HCO3-の損失)
・アルコール性中毒
・糖尿病性ケトアシドーシス
・腎臓疾患(そういえばベーキングパウダー(重曹)を処方するドクターがいたな…)
・あと覚せい剤とかエクスタシーなどの中毒
など

☆体液のHCO3(mEq/L)目安
胃:-
Pancreatic:90
Bile:35
Small Bowel:25
Diarrhea: 45

PNにおけるAcetate(目安)
>-100mEq/L以上投与:ひどい下痢、代謝性アシドーシスの時、Renal HCO3wastingなどの時。
40-80mEq/L:ノーマルな時は特に何もしない。多くの市販アミノ酸液には72-151 mEq/L含まれている。
ゼロ:代謝性アルカローシスや脱水の時はacetate無し。



【代謝性アルカローシス】:血清HCO3-が24mEq/L以上でpHが7.4以上
・Cl-の損失(胃分泌液の損失:嘔吐、NG drainage、Cl-wasting diuretics)
・K+の損失(下剤乱用、アルドステロン症などなど)
・リフィーディングシンドローム
など

PNにおけるChloride(目安)
>-110mEq/L:代謝性アルカローシス、NGからの損出(抜きすぎてCl-損出)、refractory vomiting(Cl-損出)などの場合。
38-77mEq/L:ノーマルなときは特に何もしない。多くの市販アミノ酸液には<-40mEq/L含まれている。
38mEq/L以下:代謝性アシドーシス、ひどい下痢の時

*ちなみに現場では塩と酸は触ってないので(見てるだけです。代謝に強い臨床薬剤師が1人いると耳にしてます…臨床薬剤師になるには8~9年掛かるそうです。医者になる年数に近いですね。話それますが、だからこそ臨床薬剤師にしか出来ない仕事は沢山あるはずで、臨床栄養士と仕事がだぶることは少ないですよね…。)、↑は教科書知識です。Referenceは、大学院の静脈経腸栄養のクラスの講義とMosby's Pocket Guide Series-Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Balanceです←お勧め。

2009年8月9日日曜日

エネルギー量の求め方:肥満の重症患者(2)

米国静脈経腸学会の学会誌のJPEN(Journal of Parenteral and Enteral Nutrition)とNCP(Nutrition in Clinical Practice)を購読していますが、今号は私の興味のある記事が多くて嬉しい~。

JPENに重症患者ケアのガイドラインが掲載されていました。肥満患者に対するガイドラインも載っていたので、私用に記録しておきます。前にも何度も日記に書いていますが、集中治療室での肥満患者のエネルギー&蛋白質量の計算(予測)って容易ではないんです…。

【BMI>30の場合】
☆エネルギー量
・目標量の60-70%
・11-14kcal/kg ABW(実体重) 又は 22-25kcal/kg IBW(理想体重)
☆たんぱく質量
・2g以上/kg IBW(理想体重)

【BMI>40の場合】
☆エネルギー量はBMI>30と同じ
☆たんぱく質量
・2.5g以上/kg IBW(理想体重)

推奨グレード(Grade of recommendation)はDです。グレードDとは、少なくとも2つのレベル�の調査によってサポートされたものです。レベル�とは、nonrandomized, contemporaneous controlsによる研究です。

独り言:エネルギー量は今までは10~15kcal/ABWをだいたいの目安にしていましたが、蛋白質はこのガイドラインよりは少な目でしたね…。まあ、このガイドラインも目安ですし、個々の対応が大切なんでしょうね。

Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patients、2009年May-June.より。

“A contemporaneous control group exists when the results of an intervention group and a control group are compared over the same time period. An historical control group exists when the results of an intervention group are compared with the results of a control group observed at some previous time.”
http://aspe.hhs.gov/health/orgdonor/evalrpt/evaluation_methodology.htm

2009年7月26日日曜日

私的サマリー:静脈栄養の電解質(1)(09年7月)

私的サマリー:静脈栄養の電解質(1)(09年7月)
-主にナトリウム-

~~~栄養士が知っておきたいこと~~~
◎電解質はトレンドの観察が大切。一般的に電解質replacementは3-7日かかるけど、ナトリウムはもっとかかることも。
◎尿の正常な量は差があるので、量だけを見ずに検査値等もチェック。一般的な尿の量:0.5-2 mL/kg/hr(50キロなら600ml~2400ml)
◎よくあるIVF(点滴)の組成と、体液の組成の目安を知っておく。例えば、IVFでNaを投与し過ぎていたり、足りなかったしているのに、食事の食塩量にクレームがくる場合とか知っておくと便利(汗…)。あと、体液が失われるときは、電解質もガンガン失われることも知っておく。
◎脱水は脱水でも、水分が失われるたもの、ナトリウムが失われるたもの、その混合のパターンがあることを知っておく。
◎水分は水分でも、水(H2O)、生理食塩水、5%デキストロースなどは、体内で分配される場所が違うことを知っておく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【IVF(点滴・経静脈投与)の組成】
1/2NS:Na=77mEqmEq/L、Cl=77mEq/L
NS:Na=154mEq/L、Cl=154mEq/L
D51/2NS:Na=77mEq/L、Cl=77mEq/L
D5 NS:Na=154mEq/L、Cl=154mEq/L
D5LR:Na=130mEq/L、K=4mEq/L、Cl=109mEq/L 、HCO3=28 (lactate)mEq/L

独り言~高ナトリウムが心配なときには、NSの代わりに1/2NSを処方すると、1時間当たり100mlとして、一日で約140mEqの違いがでる。これって結構な違いよね。(参考:一般的なナトリウムとカリウムの必要量は、1-2 mEq/kg/d)
でも、瘻孔(Fistula)、下痢、汗、とかから水分が失われる場合は、NaとかClもガンガン失われるので要注意。

【体液の組成】
pH<4の時:2000-2500ml/d、Na=60mEq/L, K=10mEq/L,Cl=90mEq/L4の時:2000-2500ml/d、Na=100mEq/L, K=10mEq/L,Cl=100mEq/L
Pancreatic:1000ml/d,Na=140mEq/L,K=5mEq/L,HCO3=90mEq/L,Cl=75mEq/L
Bile:1500ml/d,Na=140mEq/L,K=5mEq/L,HCO3=35Eq/L,Cl=100mEq/L
Small Bowel:3500ml/d,Na=100mEq/L,K=15mEq/L,HCO3=25mEq/L,Cl=100mEq/L
Diarrhea:1000-4000ml/d,Na=60mEq/L,K=30mEq/L,HCO3=45mEq/L,Cl=45mEq/L
Urine 1500ml/d, Na=40mEq/L,Cl=20mEq/L
汗も…。

☆Volume DepletionとDehydrationの対応。
Volume Depletionは、これは日本語では何だ…。ネットで検索すると、低容量性ショック、Naの不足、循環血漿量低下とか出てきた。Dehydrationは、脱水、水の不足と出てきた。
■脱水(Dehydration)は、細胞内液(intracellular water)が失われるため、血しょうナトリウムの濃度と浸透圧が上がる(高ナトリウム血症)。
■Volume depletionは、細胞外液(血漿と間質液)(extracellular space)からナトリウムが失われた状態で、消化管出血、嘔吐、下痢、利尿剤などによっておこる(Hyponatremic Volume Depletion、Isotonic Volume Depletion、またはHypernatremic Volume Depletionの分類がある)。

例(目安):
【生理食塩水(1000ML 0.9%Nacl)の場合】
その全てが細胞外液へと行き渡る(Intravascular Space 25%、Interstitial Space75%)。
【5%デキストロースの場合】
細胞内液に2/3、細胞外液に1/3が行き渡る。
【水H2Oの場合】
細胞内液に2/3、細胞外液に1/3が行き渡る。その他少量は唾液腺、消化器官内などに。

例えば、脱水(細胞内液が欠乏している)時に、生理食塩水だけじゃ困るようですね。また、ナトリウムが欠乏している時に、水だけとっても困るようですね。

2009年7月1日水曜日

私的サマリー:静脈栄養のマクロ栄養(09年7月)

私的サマリー:静脈栄養の栄養素の求め方(09年7月)

~~~栄養士にできること~~
◎肥満患者のエネルギー:BMIに対する開始時点での目安 
25 ~30: 20~25 Kcal/kg
30 ~35: 15 to 20 Kcal/kg
35以上: 10 to 15 Kcal/kg
35キロの患者もいれば、250キロの患者もいる。
実際に、患者によっては8カロリー/kgもあれば、50カロリー/kgなんてこともあったし…。

◎炭水化物/デキストロース
・静脈栄養によく使われるのは、Dextrose monohydrateで3.4kcal/g。
・最低でも:1mg/kg/min (50キロの場合はデキストロース約72g。デキストロース5%くらいの生理食塩水を60ml/hrで使った時と同じかな)
・重症患者:4 mg/kg/minute (50キロの場合はデキストロース約290g) 
・安定してる患者:5-7 mg/kg/minute。(普段は5mg/kgぐらいが多いかな。もちろん子供はもっともっと多くて大丈夫)
・デキストロースは100-150 gmからはじめて(これはIVFsと同じくらいの量)、2日目を目処に目標量にあげていく。でも、やっぱりデキストロースはゆっくり上げて、たんぱく質は最初から100%投与とか便宜上やりにくいから、全体を少しずつアップしていくってのが多いかも。

◎脂質
・脂質は1g/kg/d以下にする。過剰投与はhypertriglyeridemiaとかreduced lipid clearanceに。その他にも論文などでは弊害が発表されているよう。
・EFAは総エネルギーの2~4%。ホントに不足すると、髪がボロボロ抜けたりする。
・脂質はTG400以上の場合は投与中止する。でも実際は250くらいでホールドするのをよくみるなぁ。やっぱ肝機能が絶好調じゃない時は心配だよね。
・脂質は肝臓にきびしい。もしLFTsが上昇するようだったら、脂肪投与の量や回数を減らす。
・アメリカでは、静脈用のlong-chain&medium chain triglyceridesは今のところ商業用ではなし。研究用のみ。 
・材料はSoybean or safflower/soybean emulsions。
・脂質は10%(1100kcal/L)、20%(2000kcal/L)、30%(3000kcal/L)があるけど、実際に使うのは、病院によって10%か20%。30%は調合用。10%と20%を使う、異なる病院で働いたことがあるけど、脂質はmlでオーダーするから、10%と20%を勘違いした処方が出されていて、すごい量が投与されてたのも発見したことも。例えば、10%を250mlなら275カロリーだけど、20%を250mlなら500カロリー。鎮静剤の脂質も1.1kcal/ml。

◎たんぱく質/アミノ酸
・アミノ酸で一般的なのは10%溶液。15%とか20%もあるけど、値段が無茶高い。


◎TPN投与を目的量までもって行く前に
Mg、Phos、KのレベルはOKか?
Gluは200以下か?
TGは400以下か?
そうじゃなければ電解質投与、インスリン投与etc

◎TPNの停止/ホールド
サイクル投与終了時に低血糖になる場合は、2時間かけて投与率を落としていく。
継続PNを中断時も1時間くらい掛けて落としていく。
TPN中断の目安は、患者が1/2-3/4の栄養摂取量をENやPNで補えるとき。
~~~~~~~~~~~~
今回は、標準スタンダードってことで、参考文献なし…。

2009年6月19日金曜日

私的サマリー:静脈栄養の投与ルート(09年6月)

私的サマリー:静脈栄養のルート・安全性・指標(09年6月)

~~~~栄養士としてできること&知っておくべきこと~~
◎PNの目安
・腸が使えない AND 深刻な低栄養 OR 5-7日間絶食
・この先5日以上の絶食が予測されているとき。

◎PNのはじめかたの目安
・カロリー、たんぱく質、水分の必要量を求める。
・適切な投与ルートの決定と確保。
・まずは電解質の修正。
・一番最初は、カロリー半分、たんぱく質は目標100%、水分も目標100%でバッグを作成。水分はsterile water(滅菌された水)。ウチの病院では1リットルごとに値段が上がるので、合計2010mlなんてことにならないようにっと。

◎静脈栄養の投与ルート
短期間利用の場合(4週間以内)
■PPN溶液/PPNの使用が必須な投与ルート
・末梢静脈(Peripheral Vein)。手首の近く。
・Midline Catheter(ひじの内側から肩の下辺り)。ピックラインを途中でとめた感じかしら。
・Femoral Vein(大腿(だいたい)静脈、太ももの付け根あたりからおへそ下らへん)
これは普通は継続投与

■CPN溶液/CPNで大丈夫な投与ルート
・PICC((Peripherally inserted central catheters:普段はピックラインって呼んでる、ひじの内側から心臓のすぐ近く(distal superior vena cava/cavoatrial junction)まで。腋窩(えきか)静脈→鎖骨下静脈→上大静脈へ)。日本語でもピックって呼んでいるよう。
・鎖骨下静脈(Subclavian Vein)
・内頚(けい)静脈(Jugular Vein)
こっちは、サイクル投与か継続投与

長期間利用(4週間以上、在宅静脈栄養とか)
投与ルート:Port 又は Tunneled Catheter(Hickman)。日本語ではHickmanカテーテルかな。

これらのカーテルは、放射線科医によって設置される場合が多いが、場所によっては認定された看護師がPICCやMidlinesを設置することも(うちでも)。看護師が設置した場合も必ずX-rayで位置を確認している。例えば、PICCやmidlineなどは薬投与などの目的で造られることもある。投与ルートのことを知っておくと、静脈栄養か経脈栄養か、それとも絶食か…なんて迷っている時に役立つ。既にあれば、静脈栄養のために作らなくていいかね。PICCがあればCPNもokだし。

◎安全な静脈栄養のために
■PPN:濃度は<900 mOsm/L。水分制限のない場合。 一般的に 3-1 admixture。デキストロースとアミノ酸のミックスもPPNとして認識される場合も多い。うちはこのデキストロースとアミノ酸はプレミックスのもある。 3 in 1の溶液(3つの栄養素が一緒に混ぜてあるもの)
アミノ酸 20-60g/L
デキストロース 136-860kcal/L
脂質 200-600kcal/L
Ca + Mg  21 mEq/L以下
鉄 加えないし、入ってない

浸透圧の求め方
Grams Amino Acids x 10 = __ mOsm
Grams Dextrose x 5 = __ mOsm
Grams Fat (30% emulsion) x 0.67 = __ mOsm
Total mEq of Ca, Mg, Na and K x 2 = __ mOsm
________________________________________
Total Osmolarity per Liter of Solution __ mOsm

■CPN:濃度は1500 - 2000 mOsm/L, ミックスは2-1 又は3-1 admixture, central veinのみからの投与。3-in-1は、分離していたら命に関わり超危険。在宅静脈栄養をしている場合は、Dual Chamber Bagsを使う人も、これは袋が2つに分かれていて(脂質とアミノ酸&デキストロース)、使う直前にまぜあわせるもの。

REFEEDING SYNDROMEに注意:Severely malnourished, marasmic, cancer cachexia, eating disorder, alcoholic, elderly

◎何らかの理由でTPNを停止する場合は、停止中はデキストロースの入った溶液(D/10/W)を使う。
~~~~~~

(Q)妊娠3ヶ月で妊娠悪阻(hyperemesis gravida:HEG)のため入院。3週間食事はとれていない。IVFで水分補給をしている。midline catheterはすでにある。栄養療法をどうするか。

(A)既にmidline catheterがあるので、それを使ってただちにPPNを開始。その間に、服薬と併用して食事療法を開始。もしも吐き気・嘔吐が改善されなかったら、central access を作ってTPNを試みる。ASPENによると、midline catheter使用OKな期間は2-4 weeks。教科書的には、経腸栄養(特に)もよさそうだけど、実際にENを使っているHEG患者ををみたことのある人は、クラスメートにも講師にもいない。私もない。つわりの時は、鼻に管が入っているだけで、吐きそうかも。

私的サマリー:肝硬変(09年6月)

私的サマリー:肝硬変(09年6月)
~~~~栄養士としてできること~~~~
◎肝性脳症=低たんぱく質という単純な栄養療法は避け、栄養バランスのよいおいしい料理をすすめる。
◎低たんぱく質の食事をしている患者さんを見つけたら、話をよく聞く。肝臓病には必ず低たんぱく質が必要だとと勘違いをしている人が多い。低栄養につながるので要注意。なぜ低栄養が悪いのか知らなかったらなお気を付ける。
◎BCAAの使用は日本では盛んだが、欧米ではほとんど使われなくなった(以前はよく使われていたが)ことを知っておく。
◎BCAA栄養剤が作られた背景:精神状態の異常を管理することが目的だったよう。
◎肝性脳症が無い場合:25-35kcal、たんぱく質1-1.2g/Kg,BCAAは勧めない。(2011年3月追加~日本ではBCAAを癌抑制の観点からも勧めているよう。こちら米国では今のとこ目立った動きはなし。製薬会社さんからもまだ連絡が無いような…)
◎明らかな肝性脳症がある時(レベルIII/IV:せん妄・意識もうろう・意識が無いetc): 35kcal、たんぱく質0.6-0.8g/Kg,BCAAの推奨は慢性肝性脳症で薬(ラクチュロース等)が効かない時のみ(B)。
◎食道静脈瘤があっても、経腸栄養はOKとされる。ただし、腹水や静脈瘤がある場合は、合併症の観点からPEGは勧められていない。

カロリー・たんぱく質は、日本での栄養療法コンセンサスと大差はないかな…。
~~~~~~~~~~~~

・食道静脈瘤(esophageal varices/Esophagogastric varices)は、 肺動脈性肺高血圧症(portal hypertension)が原因になることが多い。肺動脈性肺高血圧症の主な原因は、アルコール性の肝臓病(alcoholic liver disease)や慢性肝炎(chronic active hepatitis)が多い。アステリクシス/羽ばたき振戦(Asterixis, hand-flapping tremor)は、肝性脳症(hepatic encephalopathy :HE) の患者によくみられる。

・栄養アセスメントは水分貯留(fluid retention)にも注意。患者の体重は本当の体重でないかもしれない。アルブミンで栄養判断をするのは駄目。肝臓病では低栄養がとても多いと言われるので注意する。低栄養は、食欲低下、早期満腹感(early satiety)、飲酒、栄養のある食べ物へのアクセス不足などが原因である場合も多い。また栄養の吸収低下、エネルギー要求度が亢進した状態(hypermetabolic, hypercatabolic state)なども要因となりえる(1)。

ASPENのガイドライン(2)
・Protein restriction should be implemented for the acute management of overt hepatic encephalopathy. (A) 
・Protein restriction should not be implemented chronically in patients with liver disease. (B) 
・Nutrition assessment in patients with liver disease should include screening for micronutrient deficiencies, including vitamins A, D, E, and K, and zinc. (B)

・ESPENは食道静脈瘤があっても経腸栄養を推奨。経腸栄養は長い目でみた時、サバイバルや合併症の効果があるかもとしている。ESPENでこのガイドラインが発表されたあとに、食道静脈瘤の時のチューブ栄養は危険だとする意見がでたが、ESPENは経腸栄養の推奨を維持(3,4)。

・腹水や静脈瘤がある場合はPEGは合併症を引き起こすリスクが高くなるので勧めていない(C)(5).

○Branched chain amino acid (BCAA)の使用について○
・「Cochrane review」によるとBCAAに効果があるというエビデンスはない。しかし、メタアナリシスは規模が小さかったとも…(6)。
・ESPENは、肝性脳症でチューブ栄養を使用している時のみ、BCAAがはいった栄養剤を勧めている。
・ただ、日本をはじめとするアジアから出てくる論文にはBCAAには効果があるとするものも多い。なぜだろう…?(7)。

各団体の肝臓病のガイドライン(8,9,10)
・ESPEN: 35-40kcal/kg、たんぱく質1.2-1.5g/Kg、BCAAは肝性脳症でチューブ栄養を使用している時のみ(A)
・ASPEN(肝性脳症なしの時): 25-35kcal、たんぱく質1-1.2g/Kg,BCAAは使わない。
・ASPEN(肝性脳症がある時): 35kcal、たんぱく質0.6-0.8g/Kg,BCAAの使用は慢性肝性脳症で薬が効かない時のみ(B)。
・Canadian Clinical Practice Guidelines:BCAAの効果はエビデンスが不十分なので勧めない。

エビデンスコードのレベル
(A)エビデンスあり(prospective, randomized trials)
(B)エビデンスあり。しかしrandomizationなし。
(C)エキスパートオピニオンやコンセンサス

(クラスディスカッションより)肝臓病が進むと、GI bleeding, sepsis, multisystem organ failureなどの合併症がみられ、これらのストレスのために多目のたんぱく質が必要となる。しかし、肝臓へのダメージのために代謝が上手くいかず、肝性脳症になることもある。何が肝性脳症を起こすかははっきりしていない。肝性脳症になると、アブノーマルな血しょうアミノ酸がみられる(↑メチオニン、↑芳香族アミノ酸(AAA)、↓分岐鎖アミノ酸(BCAA))。BCAA入り栄養剤ができた背景のセオリーとしては…AAAのAAとBCAAのAAは、血液脳関門(blood-brain barrier,BBB)のトランスポートを競いあう。AAAとBCAAのバランスがくずれ、AAAが脳にuptakeされると、AAAがFalseニューロトランスミッターとして働き肝性脳症になる。BCAAを増やすことで、このバランスを正そうというもの。必要ない時は、とにかくたんぱく質を制限しない。BCAAが窒素バランスを改善したり、肝性脳症を改善できるかは、結局のところ今も議論・研究中。BCAAはスタンダードたんぱく質に耐えられない人には、たんぱく源として使用するケースがあるかもしれないが、BCAAの使用は短期間にするべき。効果がはっきりしないものは、長期間使う必要はないということでしょうか。

1. Tsiaousi ET, Hatzitolios AI, Trygonis SK, Savopoulos CG. Malnutrition in end stage liver disease: recommendations and nutritional support. J Gastroenterol Hepatol. 2008;23:527-533.
2. A.S.P.E.N. Guidelines: Specific Guidelines for Disease-Adults http://www.nutritioncare.org/
3. CabrN¦, M. Plauth, O. Riggio, M. Assis-Camilo, M. Pirlich, J. Kondrup. Dr. Andus’ letter. Clin Nutr 2007;26:169–274.
4. Tilo A. CORRESPONDENCE: ESPEN guidelines on enteral nutrition: Liver 
disease¡ªTube feeding (TF) in patients with esophageal varices is not proven to be safe.Clin Nutr 2007;26:272. 
5. Plauth M, Cabre E, Riggio O, et al. ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Liver disease. Clin Nutr. 2006;25:285-294. 
6. Als-Nielsen B, Koretz RL, Kjaergard LL, Gluud C. Branched-chain amino acids for hepatic encephalopathy. Cochrane Database Syst Rev. 2003;CD001939. 
7. Nakaya Y, Okita K, Suzuki K, et al. BCAA-enriched snack improves nutritional state of cirrhosis. Nutrition. 2007;23:113-120. 
8. A.S.P.E.N. Guidelines: Specific Guidelines for Disease-Adults http://www.nutritioncare.org/ 
9. Plauth M, Cabre E, Riggio O, et al. ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Liver disease. Clin Nutr. 2006;25:285-294. 
10. Heyland DK, et al. Canadian Clinical Practice Guidelines for Nutrition Support in Mechanically Ventilated, Critically Ill Adult Patients. Journal of Parenteral and Enteral Nutrition. 2003;27(5):355-373



? (kei)
2011-03-10 17:07:54
おなたの知識も偏ってます。
だから栄養士には任せられないんだよね。
肝硬変等の新しいガイドラインが出ましたが、BCAAは肝がん抑制にも効果的といわれています。
肝生脳症の有無だけとは限りませんよ。
keiさんへ (あき)
2011-03-20 14:16:14
コメント有難うございます。今さっとですが
BCAAは肝がん抑制の文献見ました。
>だから栄養士には任せられないんだよね
私1人のせいで他の栄養士の方まで見捨てない下さいね…。まだまだ分からない事が沢山あるので勉強中です(実際学生してますし…)。もしかするとBCAAがこちらでもまた盛り上がってくるかもしれませんね。

2009年6月14日日曜日

私的サマリー:重症外傷(09年6月)

私的サマリー:重症外傷(09年6月)

~~~栄養士としてできること~~~
◎急性腎不全でもたんぱく質を制限しない(昔は制限していた)。十分なたんぱくが治癒に必要。必要ならば透析を(ICUではrenal replacement therapy (CRRT)など。Hemodialysisはもちろん急激すぎて不耐の場合多し)。透析導入を遅らせるためのタンパク制限はしない(Grade E)。

◎今のところASPENは、外科重症患者(trauma patient)に、免疫増進栄養剤(immune enhancing formula)を使って、目標エネルギーの50-65%を投与することを勧めていることを認識する。

◎急性腎不全(ARF)用の特別な栄養剤は必要ない(値段が高いから)。ただし、電解質の調整が上手くいかないときは、スペシャリティー栄養剤も考慮。CRRTなど利用する場合は、たんぱく質が2.5g/kgくらいまで必要なこともあるかも(Grade E)。

◎状況によっては、25-30kcal/kg、たんぱく質1.2-1.5g/kg くらいからはじめて、大丈夫そうだったら30-35kcal/kg、たんぱく質1.5-2.0gへとアップするのよいかも1.2-2.0 g/kgあたりを目安に。ただしVENTを使用している時は、必要エネルギー量が減る。

◎Vasopressors(昇圧薬)の投与量が減り、Volume Resuscitation(輸液負荷)が完了/安定してから経腸栄養開始する。そうでないと、腸の酸欠などより、腸の壊死へつながる可能性がなくはない。患者が安定してなくても大丈夫だという報告もあるが、もし経腸栄養を開始するときは、ゴール投与量よりずっと低めの投与、または微量投与にする。

◎IED(immune enhancing diet)が注目されており、集中治療室での使用に関して、よい結果も報告されていることを知っておく。

◎栄養投与は、患者の状態が不安定でなくなってからの開始が一般的。外科系集中治療室で栄養療法を開始するうえで、安定と不安定が何を指すのか知っておく。知らないと患者のケアプランの話についていきにくい。

◎患者の状態が不安定(Hemodynamically unstable)とは、血圧維持のために、 大量のIVFsの投与 and/or 昇圧薬(pressor agents) が必要な状態。ADA(アメリカ栄養士会)のエビデンスアナリシスライブラリーによると、こういう不安定な患者でも早期経腸栄養に耐えられる場合が多いが、突然の血圧低下、昇圧薬の使用量アップ、ventilatory supportの依存がアップした場合は、経腸栄養を停止するように勧めている。十分なresuscitation(輸液負荷)が行われたとみなされる例としては、mean arterial pressure (MAP) が少なくとも70mmHgになったとき。ICUのモニター画面では、MAPは血圧値の近くに表示されてたりする。

◎人工呼吸を使用しているのは、必ず息ができないという訳ではない。メタボリックアシドーシスの治療に使われることもある。メタボリックアシドーシスの治療目的で重炭酸ナトリウム(Sodium Bicarbonate)を使うと、メタボリックアルカローシスを引き起こす可能性がある。

http://www.adaevidencelibrary.com/template.cfm?template=guide_summary&key=647

これらは、外科に限った内容ではないです…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



http://www.ccmtutorials.com/renal/RRT/page8.htm

+クラスディスカッションより+
・Acute renal failure (ARF) はクレアチニンが2mg/dl以上のことであり、重症外傷の深刻な合併症である。ARFはattributed to rhabdomyolysis, overtaxing the 
kidneys from the breakdown of muscle fibers releasing myoglobin into the bloodstream。迅速なHydration with intravenous fluidsは、mioglobinを腎臓から流し出すだめに重要。

・26本のプリマリー研究のシステマティックレビューによると、ICUでIEDの投与を受けた患者には、↓感染、↓腹部abscesses、↓nosocomial pneumonia and bacteremia 、↓Vent、↓ICUの滞在日数がみられた。このシステマティックレビューは、IEDの使用勧めている(グレードB)。

・もうひとつのシステマティックレビューでは、22のランダマイズドトライアル(Randomized trialsによる2419人の重体患者のスタディー)でもIEDの使用ケースでは低めの合併症がみられたと報告している。

・ただし、患者がcirculatoryショック&蘇生措置を繰り返している間は経腸栄養は適さない。Vasopressors(昇圧薬)の投与量が減り、Volume Resuscitation(輸液負荷)が完了/安定してから経腸栄養をはじめる。栄養剤の投与は、小腸(ICUで胃への投与はまれと思う)へ10-20ml/hrくらいからはじめ、低血圧、腸の壊死(bowel necrosis)などなど問題がないかモニターする。安定していないときに栄養剤を投与すると腸に十分な酸素がいかなくなり腸の壊死(bowel 
necrosis)がおこることも。Bowel necrosisの確立は重体患者(critically ill )で0.3 -8.5%という報告がある。
Ref:Cresci G and Cue J. The Patient with Circulatory Shock: To Feed or Not to Feed? Nutrition in Clinical Practice. 2008;23:501-509

・しかし、安定していない患者(circulatory failure )に、1000カロリーの経腸栄養を投与しても大丈夫だったという論文も出ている。
Ref:Berger M, Revellly JP, Cayeux MC, Chiolero R. Enteral Nutrition in Critically ill Patients with Severe Hemodynamic Failure after Cardiopulmonary Bypass. Clin Nutrition, 2005;24:124-132. 

・人工呼吸器(mechanical ventilation)は、メタボリックアシドーシスの改善のために使われることもある(PaCO2が50-60 mm Hgでcyanosisやlethargyなどのクリニカルサインがみられる場合など)。Sodium bicarbは、メタボリックアルカローシスを起こすリスクがあるために、積極的に使用されない。水分のリプレースメントは、isotonic sodium chloride solutionsが使われ、lactateを含むものは避ける。severe lactic acidosis with renal failure or congestive heart failureでは透析が使われることもある。
1. http://www.adaevidencelibrary.com/template.cfm?template=guide_summary&key=647
2. Heitz, Horne. Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Balance. Fifth edition. 2005. p. 175-176.
3. Title: Lactic Acidosis. http://emedicine.medscape.com/article/167027-print

・不安定な時(hemodynamically unstable:大量の水分、輸血が必要な時)は、resuscitationが完了するまで経腸栄養をはじめるべきではない。でもこれはエビデンスレベルE(6) 

・いろいろ言っても、鎮静剤からの脂質で、既に800~1000カロリーくらい投与されている患者さんもいるし、難しいところ。アメリカは鎮静剤の使用が多いともきいたけどホントかな。まあ、患者さんの体の大きさが違うから比較は難しい?!。

2009年5月3日日曜日

私的サマリー:呼吸器系重症患者(09年5月)


私的サマリー:呼吸器系重症患者(09年5月)

~~栄養士としてできること~~
◎高脂質・低炭水化物の栄養剤は使わない。
◎アルジニンなど免疫系の入った栄養剤も試してみる(敗血症の時は注意)。でも長期使用への問題視、量や組成の問題などあるみたい。
◎食物繊維は使わない、または微量のものがベターかも(呼吸器系に限ったことではないが)。
◎カロリー投与は目標値の50%以上。でも70%以下くらいを目安に。
◎静脈・経腸栄養の両方で、グルコースの過剰投与に注意。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・呼吸器系向けの栄養剤(pulmonary formula)は高脂質、低炭水化物であるが、その効果をサポートするエビデンスはない。2009年のASPEN会議でも、ICUでのpulmonary formulaは支持されていない(1,2)。

・2009年のASPEN会議では、major elective surgery, trauma, burns, heand and neck cancer, and critically ill patients on mechanical ventilation(ARDS:急性呼吸窮迫症候群 and ALI:急性肺障害とか)の患者に対して(severe sepsisの患者は注意しながら)、immune modulating(arginine, glutamine, nucleic acid, omega-3 fatty acids, and anti-oxidentsなど)の高濃度栄養剤(水分調整のため:いつも必要とは限らない)の使用、少なくとも50-60%の必要カロリー量の投与を勧めたようだ。

・一部のRDはICUでPaO2/FiO2 ratioの計算をしているようです。多くの論文等では <200はARDS、<300はALIらしい。でもPulmonogistsによって基準は違う。 ・栄養投与の目標は、十分なたんぱく質投与、栄養の過剰摂取避けて過剰二酸化炭素の生産を避ける(VENTをWEANする間)、そして高血糖を避けること(3)。

・呼吸不全(respiratory failure)の場合に一番大切なのは、過剰栄養投与を避けること。過剰投与は二酸化炭素を溜め込んでしまう。特に、高炭水化物の経腸栄養剤、デキストロースベースのTPNで重要。グルコースが酸化されるとエンドプロダクトは炭水化物と水なので。特に重症なARDSの患者はOxepaのようなスペシャリティー栄養剤を短期間使うと効果的かも。

・免疫アップを期待してICUで使われている栄養剤にarginineなどが含まれているものがあるが、過剰使用も懸念されているとのこと。量の問題、それとも種類の問題?!短期間ってのがポイントなのかな?!。これからのリサーチで解明が進むかな。まだまだ分からないことが沢山ですね。

・集中治療室での食物繊維投与は注意が必要。食物繊維はいつでも素晴らしいと思いがちだがいつもそうではない。重症患者の場合は、腸管内のperfusionが十分でないこともあるので、低食物繊維のフォーミュラを使うべき(クリティカルケアの市販フォーミュラは低食物繊維になっている場合がほとんどだけど、スペシャリティー栄養剤は値段が高い!)。

・ventilatorをweaning offするときは、isocaloric, standard polymeric formulaがいいって教科書には書いてあるよう(2)。2009年も同じかな?

・すかさずAbbottのrepさんなどが "recommendations for the use of oxepa"を配布している。。とクラスメートが話していました。body temp, heart rate, resp. rate, PaCo2, diagnosis, ALI/ARDS, PaO2/FiO2などなどのっているそうです。さすがです。今年のASPENのステートメントを受けて、免疫サポート系が入っている栄養剤は、これからもっとICUに入ってくるだろうし、クラスメートも使っている人が増えているようです(ちょっと前まではあんまり効果無いって言われていたような。毎年変わりますね)(4)。

1. Parrish, C. Nutrition Support for the Mechanically Ventilated Patient. Critical Care Nurse 2003;23:77-80.
2. ASPEN Nutrition Support Core Curriculum: A case based approach-The Adult Patient.
3. Jeejeebhoy, K. Permissive underfeeding in the critically ill. Nutrition in Clinical Practice 2204;19(5):477-480.
4. Pontes-Arruda A, DeMichele S, Seth A, Singer P. The use of an inflammation-modulating diet in patients with acute lung injury or acute respiratory distress syndrome: a meta-analysis of outcome data. Journal of Parenteral and Enteral Nutrition. Volume 32, Number 6. Nov-Dec 2008. pp 596-605

こんにちわ。 (コイン)
2009-09-23 09:52:12
以前、担当した糖尿病患者さんでCOPDを発症した際、PaO2/FiO2から結果を算出し、>200torrだと糖質↓脂肪↑が良いですよ。とアメリカから帰国したRDの方に教えていただきました。

その時は言われた通りやって、患者さんは回復し、血糖コントロールも良好状態でした。

しかし、自分自身の解釈が追い付かず、言われるがままの栄養管理だったので、PaO2/FiO2 ratioの深い意味がよくわかりません。
PaO2→動脈血酸素分圧、FiO2→吸入気酸素分画room airで20%までは理解したのですが、�FiO2は酸素マスクをしていればどう解釈したらよいのでしょうか?�またPaO2/FiO2の代謝メカニズムが知りたいのですが、なかなか栄養と絡めた文献や参考書がありません。

以上2点教えていただけないでしょうか?
よろしくお願いいたします。
コインさんへ。 (あき)
2009-09-30 06:16:36
人工呼吸器等における、PaO2、FIO2についてですが、私も分りません。総合的に理解するのはとても難しいと思います。全く別の専門分野なので、ICUには呼吸器系のスペシャリストがいると思います。質問は私ではなく、その人たちにされたほうがいいと思います。ひとまず、日本のウィキペディアはいかがでしょうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%82%AC%E3%82%B9%E5%88%86%E6%9E%90

ただ、これらの検査値(AGB's)は、こういった患者さんではよくチェック(多分毎日)されていると思うので、それ自体の内容を知っておくのはいいかも知れません。

AGB'sについて
http://en.wikipedia.org/wiki/Arterial_blood_gas

Acute Respiratory Failure (ARF)、Adult Respiratory Distress Syndrome (ARDS)の違いを理解し、その際にどういった栄養サポートが適切かどうか…というのが私たちの仕事だと思います。

あと、PaO2・FiO2と直接からめた文献は確かに少ないかもしれません。ただ、栄養士に必要なARF、ARDS等の文献はかなり出ています。

>以前、担当した糖尿病患者さんでCOPDを発症した際、PaO2/FiO2から結果を算出し、>200torrだと糖質↓脂肪↑が良いですよ。とアメリカから帰国したRDの方に教えていただきました。
ですが、

この患者さんは人工呼吸器を使用されていたのでしょうか?今現時点では、COPD患者さんへの高脂肪栄養剤の使用は指示されていません。鎮痛剤の脂質量が多いため、逆に低脂肪栄養剤が必要なことさえあるかと思います。現時点では、とにかく総カロリーの過剰投与、炭水化物の過剰投与を避けることがとても大切だとされています。
高脂肪、高炭水化物の栄養剤ですが、アメリカでも少し前までは使われました(病院によっては多分3~4年くらい前まで)。RDでも、それ以降に現場にいない人、大学で学んだ知識をもとにしているRDなどには、十分に知られていないかもしれません

2009年5月2日土曜日

エネルギー量の求め方


◎ハリスベネディクトは、使うべきではないことが既に分かっており、RDは使わなくなりました。健康な人にもダメ、病気の人にもダメ、怪我の人にもダメです。臨床栄養士でハリスベネディクトを使っている人がいれば止めよう!



★ADA Evidence-Based Guidelines for Determination of Resting Metabolic Rate

Indirect Calorimetry (Rating- Grade I: strong)
やっぱりゴールドスタンダードは。でも現場では難しい。

肥満ではない重症患者の場合 (Rating- Grade II: fair)
Penn State, 2003a (正確率-79%)
Swinamer (55%)
Ireton-Jones (52%)

重症患者では60~70%の推定エネルギーの投与がいいようです。
60-70%のEN(経腸栄養)を48時間以内に開始するのが望ましい(Rating- Grade II: fair)
70%以上の必要エネルギーを外科系肥満患者に投与するとネガティブのアウトカム(Rating- Grade III: limited)

重症患者に使うべきでない(Rating- Grade I: strong)
Harris Benedict (with or without activity and stress factors)
Ireton-Jones, 1997
Fick equation

肥満患者への使用(Rating- Grade II: fair)
Ireton-Jones, 1992
Penn State, 1998

★Hise et al. 2007
>81% of goal kcal→入院 47 days
<81% of goal kcal→入院 22 days Hise et al. 2007:Medical ICU patients
<82% of goal kcal, ICU LOS was 12 days82% of goal kcal, ICU LOS was 25 days
If <84% goal kcal, hospital LOS was 26 days
Hise et al. 2007:Surgical ICU patients
Surgical ICU patients
<67% of goal kcal, ICU LOS was 10 days67% of goal kcal, ICU LOS was 23 days
If <71% goal kcal, hospital LOS was 20 days

◎肥満患者&気管挿管&栄養管理◎
プレゼンの一つは、集中治療室における肥満&COPD&気管挿管患者の栄養管理についてでした。多くのクラスメートは症例の発表と文献のリサーチをまとめたスタイルでプレゼンしています。

肥満&COPD&気管挿管患者の栄養管理には、私もいつも悩まされています。私や他のRDが頭をかかえる肥満とは200キロくらいの患者さんです。日本では少ないかもしれませんが、アメリカではよくみるケースです。普通に1キロ当たり20カロリーなんてやると、総カロリーが4000カロリーなどになって大変なことになります。過剰な栄養投与は二酸化炭素の生産を増やし、気管挿管を長引かせると考えられています。以前は脂質が多い栄養剤ならいいなど言われていましたが、トータルのカロリーが多いのがまずいようです。

まとめとしては、重症患者には栄養投与をプッシュしすぎないのがいいようです。おおざっぱには7割未満程度の投与がいいようです。まあ、ICUでは、よくチューブ栄養が様々な医療処置のためにホールドされるので、よっぽとプッシュしなければ、自然に7割程度の投与になるかもしれません。ただ、RDによってはこのホールドを見越して、意図的に過剰なエネルギー量を推奨する人もいるようなので要注意。
あきさん、こんにちわ (ひみつ)
2009-05-09 08:25:10
いつも勉強になります。ありがとうございます。
日本では消費エネルギーの推定は、猫も杓子も「ハリスベネディクトの式×ロングの方法」を使用している状況です。日本人は真面目(?)で、何に関しても、「コレと信じたらコレ一筋」という傾向があるようで・・。だから重症患者さんほどとんでもない数値が出ます。

最近は著名な先生方が過剰エネルギー投与の害を訴えておられますが、その声はまだ広まっていません。
経腸栄養で過剰投与、というのは見かけませんが、TPNだと小柄な患者さんに濃い~グルコースが投与されているのを見かけるのもしばしばです。
頑張らないと!
ひみつさんへ (あき)
2009-05-09 14:39:39
グルコースの過剰投与は危険ですね…。高血糖などによる合併症や、肝臓のダメージが心配です。少し前に、とある妊婦さんのブログで、妊娠悪阻で入院し、点滴(多分PNのこと)を受けていたら、それが原因で肝臓がやられてしまったと書かれているのを見ました。こちらでは必ずGER(Glucose Infusion Rate)の計算をしますが、日本ではやらないのでしょうか?

この183キロの患者さんは、Penn State Equationを使っても推定必要カロリーは約2900カロリー(15kcal/kg)ですが、実際の平均投与量は1800カロリーだったようです(計算結果の6割弱)。クラスメートもLaura先生も控えカロリー投与(hypocaloric feeding とか permissive underfeedingと呼ばれてます)には同意していました。Laura先生がRDになった頃は、この患者さんには3000カロリーをプッシュして投与していただろうとのことでしたが、「Now we know that this is dangerous」とコメントされていました。日本でもエビデンスベースの栄養管理が注目されてきているようですが、みんなどこからエビデンスをゲットしているのでしょうね。みんなで変えていかないといけませんね!
ちょっと訂正 (あき)
2009-05-09 14:40:49
GERじゃなくてGIRです…。

2009年4月18日土曜日

静脈栄養の脂質投与と炎症

プレゼン3つ目は、静脈栄養の脂質投与についてでした。

プレゼンやディスカッションで気になったことのメモ書き:

脂肪無しの静脈栄養を10~20日続けると(幅が広いですね)、必須脂肪酸の欠乏症がでるとのことですが、個人的には明らかな脂肪酸欠乏症は一度しか見たことありません。髪が抜けたりと、ちょっと強烈でした…。オメガ6が欠乏すると、乾燥肌、感染への抵抗低下、傷が上手く治らないなど、オメガ3が不足すると、手足のしびれ、視界のゆがみなどなどみたいですね。

アメリカで、もっともよく使用されている静脈脂質は、大豆ベースで主な成分はオメガ6です。でも、オメガ6は、感染を促進したり、エイコサノイドを増やしたりなどなど、最近問題視されてます。もう一つ使われているのは、大豆ベースと紅花のミックスです。紅花がミックスされている脂質のほうが、pro-inflammatory ω-6 fatty acids は少ないそうです。これ以外は、FDAに認められていません。

しか~し、FDAに認められていないけど、オメガ3が入っているものに「Omegaven」があります。IND(新薬開発)とかリサーチ系という名目では使えるみたいです。このOmegavenを使うことで、PNALD(静脈栄養による肝臓病)をリバースするというデータもいくつか出ているらしいです。ちなみに、PNALDは、サイクル静脈栄養(1日10時間のみとか、2日に1回だけetc)をしても、週に数回の脂質投与にしても(週に3回だけとか)、マイクロ&マクロ栄養に注意を払っても、腸が機能していない人にとっては物凄くリスクの高い病気です。

そして、静脈用脂質には、めちゃくちゃほんのわずかですが、卵が入ってます。卵にアレルギーのある人でも、ほとんどの場合はアレルギー反応を起こさないと言われています。まれ~に、静脈投与の脂質にアレルギー反応を示す人がいるようですが、これは結構大変みたいです(私も経験したことありません)。皮膚にオイルをすりこむとか、ほんのちょっとだけ経口で脂質を摂取(くるみ&フラックスミックス)するなど、有効性が確立していない方法はあるようです。アレルギーがまれなので、リサーチが進んでいないのかもしれません。

まとめとしては、炎症管理のためにも;
・集中治療室で重体患者には1週間はオメガ6脂肪酸を与えないほうがよいかもしれない
・静脈栄養は患者が低栄養でない限りは、7日以降に開始がよいかもしれない(もちろん経腸が無理な場合のみ)

ところで日本の静脈用脂質は何が材料なのでしょう?



脂肪乳剤 (ひ)
2009-04-19 17:54:33
イントラリピッド、イントラファットしか知りませんが、原料は、ダイズ油、卵黄レシチン、グリセリンです。
Omegavenよさそうですね。
脂肪乳剤 (あき)
2009-04-29 03:41:55
私もOmegavenを使ってみる価値ありだと思います。日本でもオメガ6を使用しているのですね。オメガ3と炎症については、きちんとしたエビデンスが無い…という声も出ているようなので(ASPENのリストサーブによると)、これからの動きに注目したいと思います。
Omegaven (小児外科医)
2010-05-26 20:58:06
小児期に発症する短腸症候群などの腸管不全は肝機能障害(intestinal failure-associated liver disease=IFALD)を来たしやすく、学会や論文には出ないけど、実は多くの症例が肝不全のために亡くなっているのではないかと以前より考えています。
肝機能障害を来した小児腸管不全症例に対し、臨床研究としてOmegavenを使用しています。またOmegavenの製造販売元の日本法人にも何とか日本国内でも薬事承認がとれるよう働きかけているところです。
Omegaven (小児外科医)
2010-05-26 20:59:42
小児期に発症する短腸症候群などの腸管不全は肝機能障害(intestinal failure-associated liver disease=IFALD)を来たしやすく、学会や論文には出ないけど、実は多くの症例が肝不全のために亡くなっているのではないかと以前より考えています。
http://blog.livedoor.jp/motoshi_wada/archives/51764947.html
肝機能障害を来した小児腸管不全症例に対し、臨床研究としてOmegavenを使用しています。またOmegavenの製造販売元の日本法人にも何とか日本国内でも薬事承認がとれるよう働きかけているところです。
小児外科医せんせいへ (あき)
2010-08-22 02:33:57
お礼がとても遅くなりましたがコメントありがとうございます。こちらでもomegavenの調査研究はまだまだ続いているようで、学会誌である今月のNCP(Nutrition in Clinical Practice)では、乳児におけるOmegavenの急速投与はtolerateだったという内容が掲載されていました。こちらでもまだ一般には使用許可がおりていませんが、研究が進み適切な承認が下りることを願っております。