2009年4月18日土曜日

静脈栄養の脂質投与と炎症

プレゼン3つ目は、静脈栄養の脂質投与についてでした。

プレゼンやディスカッションで気になったことのメモ書き:

脂肪無しの静脈栄養を10~20日続けると(幅が広いですね)、必須脂肪酸の欠乏症がでるとのことですが、個人的には明らかな脂肪酸欠乏症は一度しか見たことありません。髪が抜けたりと、ちょっと強烈でした…。オメガ6が欠乏すると、乾燥肌、感染への抵抗低下、傷が上手く治らないなど、オメガ3が不足すると、手足のしびれ、視界のゆがみなどなどみたいですね。

アメリカで、もっともよく使用されている静脈脂質は、大豆ベースで主な成分はオメガ6です。でも、オメガ6は、感染を促進したり、エイコサノイドを増やしたりなどなど、最近問題視されてます。もう一つ使われているのは、大豆ベースと紅花のミックスです。紅花がミックスされている脂質のほうが、pro-inflammatory ω-6 fatty acids は少ないそうです。これ以外は、FDAに認められていません。

しか~し、FDAに認められていないけど、オメガ3が入っているものに「Omegaven」があります。IND(新薬開発)とかリサーチ系という名目では使えるみたいです。このOmegavenを使うことで、PNALD(静脈栄養による肝臓病)をリバースするというデータもいくつか出ているらしいです。ちなみに、PNALDは、サイクル静脈栄養(1日10時間のみとか、2日に1回だけetc)をしても、週に数回の脂質投与にしても(週に3回だけとか)、マイクロ&マクロ栄養に注意を払っても、腸が機能していない人にとっては物凄くリスクの高い病気です。

そして、静脈用脂質には、めちゃくちゃほんのわずかですが、卵が入ってます。卵にアレルギーのある人でも、ほとんどの場合はアレルギー反応を起こさないと言われています。まれ~に、静脈投与の脂質にアレルギー反応を示す人がいるようですが、これは結構大変みたいです(私も経験したことありません)。皮膚にオイルをすりこむとか、ほんのちょっとだけ経口で脂質を摂取(くるみ&フラックスミックス)するなど、有効性が確立していない方法はあるようです。アレルギーがまれなので、リサーチが進んでいないのかもしれません。

まとめとしては、炎症管理のためにも;
・集中治療室で重体患者には1週間はオメガ6脂肪酸を与えないほうがよいかもしれない
・静脈栄養は患者が低栄養でない限りは、7日以降に開始がよいかもしれない(もちろん経腸が無理な場合のみ)

ところで日本の静脈用脂質は何が材料なのでしょう?



脂肪乳剤 (ひ)
2009-04-19 17:54:33
イントラリピッド、イントラファットしか知りませんが、原料は、ダイズ油、卵黄レシチン、グリセリンです。
Omegavenよさそうですね。
脂肪乳剤 (あき)
2009-04-29 03:41:55
私もOmegavenを使ってみる価値ありだと思います。日本でもオメガ6を使用しているのですね。オメガ3と炎症については、きちんとしたエビデンスが無い…という声も出ているようなので(ASPENのリストサーブによると)、これからの動きに注目したいと思います。
Omegaven (小児外科医)
2010-05-26 20:58:06
小児期に発症する短腸症候群などの腸管不全は肝機能障害(intestinal failure-associated liver disease=IFALD)を来たしやすく、学会や論文には出ないけど、実は多くの症例が肝不全のために亡くなっているのではないかと以前より考えています。
肝機能障害を来した小児腸管不全症例に対し、臨床研究としてOmegavenを使用しています。またOmegavenの製造販売元の日本法人にも何とか日本国内でも薬事承認がとれるよう働きかけているところです。
Omegaven (小児外科医)
2010-05-26 20:59:42
小児期に発症する短腸症候群などの腸管不全は肝機能障害(intestinal failure-associated liver disease=IFALD)を来たしやすく、学会や論文には出ないけど、実は多くの症例が肝不全のために亡くなっているのではないかと以前より考えています。
http://blog.livedoor.jp/motoshi_wada/archives/51764947.html
肝機能障害を来した小児腸管不全症例に対し、臨床研究としてOmegavenを使用しています。またOmegavenの製造販売元の日本法人にも何とか日本国内でも薬事承認がとれるよう働きかけているところです。
小児外科医せんせいへ (あき)
2010-08-22 02:33:57
お礼がとても遅くなりましたがコメントありがとうございます。こちらでもomegavenの調査研究はまだまだ続いているようで、学会誌である今月のNCP(Nutrition in Clinical Practice)では、乳児におけるOmegavenの急速投与はtolerateだったという内容が掲載されていました。こちらでもまだ一般には使用許可がおりていませんが、研究が進み適切な承認が下りることを願っております。

2009年4月3日金曜日

静脈栄養 :今週から小児科

さて、今週のトピックは小児科。小児科は、栄養士の仕事を他の医療従事者に示ことができる所だと思います。特に、研修医や医学生のいる病院では栄養士の存在はとっても大きいと思います。日本でも小児科栄養士は頼られているのでしょうか。ウチの病院でも、小児科RDはよく頼られ、研修医などから「基礎から栄養学を教えて欲しい」とよく頼まれるみたいです。なんとなくの知識では栄養処方が出せないからですね。また、患者である子供の親も真剣です(大人の患者さんがそうでない言っているのではありません)。ちなみに個人的には、昔は幼児やベビーの栄養学に興味がありませんでしたが(駄目ですね…)、自分に子供ができてやっぱりこの辺は変わってきました…。

当然ですが小児科はホントに大人と違います。「3ヶ月の赤ちゃんの静脈栄養の処方を書いてくれ」と頼まれても、絶対無理です…。もし、これを患者さんの親が見ていたら心配になるかもしれませんが、きちんと小児科専門の栄養士はいますので大丈夫です。


■授業のメモ書き
・メタボリックレートが高くなるため、大人よりも水分、カロリー、たんぱく質の必要量が高くなるそうです(もちろん総量ではありません)。
・PPNの場合はデキストロースは12.5%以下。新生児ではPPNは1,000 mOsm以下。
・TPN、central venous infusionではデキストロースは30%以下。
・静脈栄養ではnonプロテインカロリーの60-75%がデキストロース。
・正期産児の場合、GIR(炭水化物 mg/kg/min)は11-15でok。導入時は5-6を目安に、その後2くらいずつ増やす。正期産児では30まで大丈夫とする団体も。1000g以下のベビーは8.6以下。大人と比較するととっても高いですね。
・赤ちゃんの場合の水分目安量は、100 ml/kg。あくまで目安。
・たんぱく質の必要量の目安は正期産児の場合は2.5 - 3g/kg/day、未熟児は3 - 3.5、1ー12歳は1.5 - 2。
・1歳児以下向けの輸液(Trophamine)には母乳のアミノ酸構成と似ていてタウリン入りのものが既製品としてあるんですね…。
・中性脂肪は大人では400くらいまで脂質投与を止めないガイドライン(でも実際は250くらいでみんな動揺する)だけど、ベビーでは<200。高ければ脂質一時ホールド。 ・静脈栄養の合併症は大人と似てるけど、カルニチン欠乏症ってのは小児ならではかな。重度な肝臓病や腎臓病などでは不足する場合あり。