2009年6月14日日曜日

私的サマリー:重症外傷(09年6月)

私的サマリー:重症外傷(09年6月)

~~~栄養士としてできること~~~
◎急性腎不全でもたんぱく質を制限しない(昔は制限していた)。十分なたんぱくが治癒に必要。必要ならば透析を(ICUではrenal replacement therapy (CRRT)など。Hemodialysisはもちろん急激すぎて不耐の場合多し)。透析導入を遅らせるためのタンパク制限はしない(Grade E)。

◎今のところASPENは、外科重症患者(trauma patient)に、免疫増進栄養剤(immune enhancing formula)を使って、目標エネルギーの50-65%を投与することを勧めていることを認識する。

◎急性腎不全(ARF)用の特別な栄養剤は必要ない(値段が高いから)。ただし、電解質の調整が上手くいかないときは、スペシャリティー栄養剤も考慮。CRRTなど利用する場合は、たんぱく質が2.5g/kgくらいまで必要なこともあるかも(Grade E)。

◎状況によっては、25-30kcal/kg、たんぱく質1.2-1.5g/kg くらいからはじめて、大丈夫そうだったら30-35kcal/kg、たんぱく質1.5-2.0gへとアップするのよいかも1.2-2.0 g/kgあたりを目安に。ただしVENTを使用している時は、必要エネルギー量が減る。

◎Vasopressors(昇圧薬)の投与量が減り、Volume Resuscitation(輸液負荷)が完了/安定してから経腸栄養開始する。そうでないと、腸の酸欠などより、腸の壊死へつながる可能性がなくはない。患者が安定してなくても大丈夫だという報告もあるが、もし経腸栄養を開始するときは、ゴール投与量よりずっと低めの投与、または微量投与にする。

◎IED(immune enhancing diet)が注目されており、集中治療室での使用に関して、よい結果も報告されていることを知っておく。

◎栄養投与は、患者の状態が不安定でなくなってからの開始が一般的。外科系集中治療室で栄養療法を開始するうえで、安定と不安定が何を指すのか知っておく。知らないと患者のケアプランの話についていきにくい。

◎患者の状態が不安定(Hemodynamically unstable)とは、血圧維持のために、 大量のIVFsの投与 and/or 昇圧薬(pressor agents) が必要な状態。ADA(アメリカ栄養士会)のエビデンスアナリシスライブラリーによると、こういう不安定な患者でも早期経腸栄養に耐えられる場合が多いが、突然の血圧低下、昇圧薬の使用量アップ、ventilatory supportの依存がアップした場合は、経腸栄養を停止するように勧めている。十分なresuscitation(輸液負荷)が行われたとみなされる例としては、mean arterial pressure (MAP) が少なくとも70mmHgになったとき。ICUのモニター画面では、MAPは血圧値の近くに表示されてたりする。

◎人工呼吸を使用しているのは、必ず息ができないという訳ではない。メタボリックアシドーシスの治療に使われることもある。メタボリックアシドーシスの治療目的で重炭酸ナトリウム(Sodium Bicarbonate)を使うと、メタボリックアルカローシスを引き起こす可能性がある。

http://www.adaevidencelibrary.com/template.cfm?template=guide_summary&key=647

これらは、外科に限った内容ではないです…。
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http://www.ccmtutorials.com/renal/RRT/page8.htm

+クラスディスカッションより+
・Acute renal failure (ARF) はクレアチニンが2mg/dl以上のことであり、重症外傷の深刻な合併症である。ARFはattributed to rhabdomyolysis, overtaxing the 
kidneys from the breakdown of muscle fibers releasing myoglobin into the bloodstream。迅速なHydration with intravenous fluidsは、mioglobinを腎臓から流し出すだめに重要。

・26本のプリマリー研究のシステマティックレビューによると、ICUでIEDの投与を受けた患者には、↓感染、↓腹部abscesses、↓nosocomial pneumonia and bacteremia 、↓Vent、↓ICUの滞在日数がみられた。このシステマティックレビューは、IEDの使用勧めている(グレードB)。

・もうひとつのシステマティックレビューでは、22のランダマイズドトライアル(Randomized trialsによる2419人の重体患者のスタディー)でもIEDの使用ケースでは低めの合併症がみられたと報告している。

・ただし、患者がcirculatoryショック&蘇生措置を繰り返している間は経腸栄養は適さない。Vasopressors(昇圧薬)の投与量が減り、Volume Resuscitation(輸液負荷)が完了/安定してから経腸栄養をはじめる。栄養剤の投与は、小腸(ICUで胃への投与はまれと思う)へ10-20ml/hrくらいからはじめ、低血圧、腸の壊死(bowel necrosis)などなど問題がないかモニターする。安定していないときに栄養剤を投与すると腸に十分な酸素がいかなくなり腸の壊死(bowel 
necrosis)がおこることも。Bowel necrosisの確立は重体患者(critically ill )で0.3 -8.5%という報告がある。
Ref:Cresci G and Cue J. The Patient with Circulatory Shock: To Feed or Not to Feed? Nutrition in Clinical Practice. 2008;23:501-509

・しかし、安定していない患者(circulatory failure )に、1000カロリーの経腸栄養を投与しても大丈夫だったという論文も出ている。
Ref:Berger M, Revellly JP, Cayeux MC, Chiolero R. Enteral Nutrition in Critically ill Patients with Severe Hemodynamic Failure after Cardiopulmonary Bypass. Clin Nutrition, 2005;24:124-132. 

・人工呼吸器(mechanical ventilation)は、メタボリックアシドーシスの改善のために使われることもある(PaCO2が50-60 mm Hgでcyanosisやlethargyなどのクリニカルサインがみられる場合など)。Sodium bicarbは、メタボリックアルカローシスを起こすリスクがあるために、積極的に使用されない。水分のリプレースメントは、isotonic sodium chloride solutionsが使われ、lactateを含むものは避ける。severe lactic acidosis with renal failure or congestive heart failureでは透析が使われることもある。
1. http://www.adaevidencelibrary.com/template.cfm?template=guide_summary&key=647
2. Heitz, Horne. Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Balance. Fifth edition. 2005. p. 175-176.
3. Title: Lactic Acidosis. http://emedicine.medscape.com/article/167027-print

・不安定な時(hemodynamically unstable:大量の水分、輸血が必要な時)は、resuscitationが完了するまで経腸栄養をはじめるべきではない。でもこれはエビデンスレベルE(6) 

・いろいろ言っても、鎮静剤からの脂質で、既に800~1000カロリーくらい投与されている患者さんもいるし、難しいところ。アメリカは鎮静剤の使用が多いともきいたけどホントかな。まあ、患者さんの体の大きさが違うから比較は難しい?!。

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