~~~~栄養士としてできること~~~~
◎肝性脳症=低たんぱく質という単純な栄養療法は避け、栄養バランスのよいおいしい料理をすすめる。
◎低たんぱく質の食事をしている患者さんを見つけたら、話をよく聞く。肝臓病には必ず低たんぱく質が必要だとと勘違いをしている人が多い。低栄養につながるので要注意。なぜ低栄養が悪いのか知らなかったらなお気を付ける。
◎BCAAの使用は日本では盛んだが、欧米ではほとんど使われなくなった(以前はよく使われていたが)ことを知っておく。
◎BCAA栄養剤が作られた背景:精神状態の異常を管理することが目的だったよう。
◎肝性脳症が無い場合:25-35kcal、たんぱく質1-1.2g/Kg,BCAAは勧めない。(2011年3月追加~日本ではBCAAを癌抑制の観点からも勧めているよう。こちら米国では今のとこ目立った動きはなし。製薬会社さんからもまだ連絡が無いような…)
◎明らかな肝性脳症がある時(レベルIII/IV:せん妄・意識もうろう・意識が無いetc): 35kcal、たんぱく質0.6-0.8g/Kg,BCAAの推奨は慢性肝性脳症で薬(ラクチュロース等)が効かない時のみ(B)。
◎食道静脈瘤があっても、経腸栄養はOKとされる。ただし、腹水や静脈瘤がある場合は、合併症の観点からPEGは勧められていない。
カロリー・たんぱく質は、日本での栄養療法コンセンサスと大差はないかな…。
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・食道静脈瘤(esophageal varices/Esophagogastric varices)は、 肺動脈性肺高血圧症(portal hypertension)が原因になることが多い。肺動脈性肺高血圧症の主な原因は、アルコール性の肝臓病(alcoholic liver disease)や慢性肝炎(chronic active hepatitis)が多い。アステリクシス/羽ばたき振戦(Asterixis, hand-flapping tremor)は、肝性脳症(hepatic encephalopathy :HE) の患者によくみられる。
・栄養アセスメントは水分貯留(fluid retention)にも注意。患者の体重は本当の体重でないかもしれない。アルブミンで栄養判断をするのは駄目。肝臓病では低栄養がとても多いと言われるので注意する。低栄養は、食欲低下、早期満腹感(early satiety)、飲酒、栄養のある食べ物へのアクセス不足などが原因である場合も多い。また栄養の吸収低下、エネルギー要求度が亢進した状態(hypermetabolic, hypercatabolic state)なども要因となりえる(1)。
ASPENのガイドライン(2)
・Protein restriction should be implemented for the acute management of overt hepatic encephalopathy. (A)
・Protein restriction should not be implemented chronically in patients with liver disease. (B)
・Nutrition assessment in patients with liver disease should include screening for micronutrient deficiencies, including vitamins A, D, E, and K, and zinc. (B)
・ESPENは食道静脈瘤があっても経腸栄養を推奨。経腸栄養は長い目でみた時、サバイバルや合併症の効果があるかもとしている。ESPENでこのガイドラインが発表されたあとに、食道静脈瘤の時のチューブ栄養は危険だとする意見がでたが、ESPENは経腸栄養の推奨を維持(3,4)。
・腹水や静脈瘤がある場合はPEGは合併症を引き起こすリスクが高くなるので勧めていない(C)(5).
○Branched chain amino acid (BCAA)の使用について○
・「Cochrane review」によるとBCAAに効果があるというエビデンスはない。しかし、メタアナリシスは規模が小さかったとも…(6)。
・ESPENは、肝性脳症でチューブ栄養を使用している時のみ、BCAAがはいった栄養剤を勧めている。
・ただ、日本をはじめとするアジアから出てくる論文にはBCAAには効果があるとするものも多い。なぜだろう…?(7)。
各団体の肝臓病のガイドライン(8,9,10)
・ESPEN: 35-40kcal/kg、たんぱく質1.2-1.5g/Kg、BCAAは肝性脳症でチューブ栄養を使用している時のみ(A)
・ASPEN(肝性脳症なしの時): 25-35kcal、たんぱく質1-1.2g/Kg,BCAAは使わない。
・ASPEN(肝性脳症がある時): 35kcal、たんぱく質0.6-0.8g/Kg,BCAAの使用は慢性肝性脳症で薬が効かない時のみ(B)。
・Canadian Clinical Practice Guidelines:BCAAの効果はエビデンスが不十分なので勧めない。
エビデンスコードのレベル
(A)エビデンスあり(prospective, randomized trials)
(B)エビデンスあり。しかしrandomizationなし。
(C)エキスパートオピニオンやコンセンサス
(クラスディスカッションより)肝臓病が進むと、GI bleeding, sepsis, multisystem organ failureなどの合併症がみられ、これらのストレスのために多目のたんぱく質が必要となる。しかし、肝臓へのダメージのために代謝が上手くいかず、肝性脳症になることもある。何が肝性脳症を起こすかははっきりしていない。肝性脳症になると、アブノーマルな血しょうアミノ酸がみられる(↑メチオニン、↑芳香族アミノ酸(AAA)、↓分岐鎖アミノ酸(BCAA))。BCAA入り栄養剤ができた背景のセオリーとしては…AAAのAAとBCAAのAAは、血液脳関門(blood-brain barrier,BBB)のトランスポートを競いあう。AAAとBCAAのバランスがくずれ、AAAが脳にuptakeされると、AAAがFalseニューロトランスミッターとして働き肝性脳症になる。BCAAを増やすことで、このバランスを正そうというもの。必要ない時は、とにかくたんぱく質を制限しない。BCAAが窒素バランスを改善したり、肝性脳症を改善できるかは、結局のところ今も議論・研究中。BCAAはスタンダードたんぱく質に耐えられない人には、たんぱく源として使用するケースがあるかもしれないが、BCAAの使用は短期間にするべき。効果がはっきりしないものは、長期間使う必要はないということでしょうか。
1. Tsiaousi ET, Hatzitolios AI, Trygonis SK, Savopoulos CG. Malnutrition in end stage liver disease: recommendations and nutritional support. J Gastroenterol Hepatol. 2008;23:527-533.
2. A.S.P.E.N. Guidelines: Specific Guidelines for Disease-Adults http://www.nutritioncare.org/
3. CabrN¦, M. Plauth, O. Riggio, M. Assis-Camilo, M. Pirlich, J. Kondrup. Dr. Andus’ letter. Clin Nutr 2007;26:169–274.
4. Tilo A. CORRESPONDENCE: ESPEN guidelines on enteral nutrition: Liver
disease¡ªTube feeding (TF) in patients with esophageal varices is not proven to be safe.Clin Nutr 2007;26:272.
5. Plauth M, Cabre E, Riggio O, et al. ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Liver disease. Clin Nutr. 2006;25:285-294.
6. Als-Nielsen B, Koretz RL, Kjaergard LL, Gluud C. Branched-chain amino acids for hepatic encephalopathy. Cochrane Database Syst Rev. 2003;CD001939.
7. Nakaya Y, Okita K, Suzuki K, et al. BCAA-enriched snack improves nutritional state of cirrhosis. Nutrition. 2007;23:113-120.
8. A.S.P.E.N. Guidelines: Specific Guidelines for Disease-Adults http://www.nutritioncare.org/
9. Plauth M, Cabre E, Riggio O, et al. ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Liver disease. Clin Nutr. 2006;25:285-294.
10. Heyland DK, et al. Canadian Clinical Practice Guidelines for Nutrition Support in Mechanically Ventilated, Critically Ill Adult Patients. Journal of Parenteral and Enteral Nutrition. 2003;27(5):355-373
- ? (kei)
- 2011-03-10 17:07:54
- おなたの知識も偏ってます。
だから栄養士には任せられないんだよね。
肝硬変等の新しいガイドラインが出ましたが、BCAAは肝がん抑制にも効果的といわれています。
肝生脳症の有無だけとは限りませんよ。
- keiさんへ (あき)
- 2011-03-20 14:16:14
- コメント有難うございます。今さっとですが
BCAAは肝がん抑制の文献見ました。
>だから栄養士には任せられないんだよね
私1人のせいで他の栄養士の方まで見捨てない下さいね…。まだまだ分からない事が沢山あるので勉強中です(実際学生してますし…)。もしかするとBCAAがこちらでもまた盛り上がってくるかもしれませんね。
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